
実は自分、高橋しん先生のコミックスを買うのは初めてです。
『最終兵器彼女』は最初の方だけ、『キミのカケラ』は途中から読み始めたという。
つまり、これが自分の高橋しん作品デビューと言っても過言ではないのです。デビューレビューです。(なんだそれ)
<あらすじ>
巨大な花のほとりで夫を待ちながらひたすらエコライフを送る奥たんの日常は、ほんわかしつつ、意外にきびしい! (Amazonより)
まずはキャラ紹介から。
奥たん。決して「奥さん」ではありません。奥たんです。ちなみに夫は「旦那たん」。
東京近郊のうるわしが丘4丁目の一戸建てで、今日も旦那たんの帰りを待っています。
北海道の農家の娘で、内地に嫁いで来ました。推定25歳。
Pたん。奥たんのペットのミニウサギにして
物語の語り手。自らを「奥たんの愛情でできている」と自負しています。
このお話、毎回毎回、旦那たんを待つ奥たんが夕ご飯を作ることで締めとしています。
しかも、その料理が実に旨そうで。
そして美しい。つつましくも整った食卓を作るのが夢である奥たんらしいです。
その食事をこれまた旨そうに、食べる食べる。

いい食べっぷりです。血肉がうずうずするような、力の入ったこの描写。まさに「生きている」ということを感じさせてくれる場面です。
しかしながら、そこは高橋先生。そんなほわほわっとした話としてだけで済ませるわけがありません。
この漫画の基本設定を言っておくと、この世界では東京に巨大な「花」が咲いています。
その花のおかげで、都心は植物に包まれ、あたり一体は封鎖され汚染が心配されています。(この地域の作物を怖がって食べない人も)
そして、都心からの
生還者はナシ。当然、東京勤めの旦那たんも・・・・・・。
先ほどののんびりした日々の裏には、こういった世界が横たわっているわけです。
異常の上に成り立つ日常。そんな歪んだ世界―植物が文明を飲み込む世界―は、その精細な筆致によって確かに裏打ちされ、私たち読者の前に現れます。

でも、こんな世界の植物でも、変わらずに人々に果実を与え、種子を与えています。
そして、それを受け取り、育て、幸せそうにいっぱい食べて生きていく奥たん。
そんな「食べる」という、命を育てていく行為の美しさ、命と命が繋がっていく美しさは、この世界観だからこそ成立するものだと自分は思います。
生きることは、食べること。
「食」の美しさを描いたこの漫画、是非是非オススメします。
んでもって。
だから黒タイツの時代だって言ったでしょ!(大興奮)
- 2009/05/01(金) 22:51:15|
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