今、空と大地を繋ぐのは、星屑の海から垂らすマイクロパルスの細い糸―電撃大王ジェネシス連載中の、『スズログ』の1巻が発売されました。ネットがこの半月の間使えなかったので、本屋で見かけたときに、狂喜乱舞してレジへダッシュしたのはいい思い出。
FLIPFLOPs先生の、アニメ化も決定している『猫神やおよろず』に続く商業作品3作目、ということになるのかな。
本題は追記からー。
あらすじは、
西暦2097年1月3日、小惑星ルドラが地表に衝突。地表の文明は破壊され、衛星軌道上では深刻なケスラーシンドロームが発生した。宇宙に逃れた人々は、高速で周回するスペースデブリの層によって、地球への帰還を阻まれていた。それから70年。地上でわずかに生き残るヴァーチャルサーバーからデータをサルベージする「ダイバー」が台頭していた。そのダイバーの中でも、14歳ながら天才的な実力を持つ少女・鈴絽(スズロ)は、祖母のツムギ、オペレーターの三郎太と共に、危険と隣り合わせのダイブに挑んでいく。
と、ちょっと長くなりましたが、こんな感じでしょうか。
しかし、この作品、なんといいますか、
すごくSF心をくすぐってくれます。あらすじに「ケスラーシンドローム」と書きましたが、「何じゃそりゃ」と感じる方も多かろうと思います。まあ簡単に言えば、スペースデブリが人工衛星などに衝突したり、互いに衝突することで加速度的にスペースデブリが生じるという危険性を示すモデルの一つのことです。詳しく知りたい方は→
ケスラーシンドローム(Wikipedia)で、このケスラーシンドロームですが、この一語だけで
自分の中のにわかSF心がくすぐられるんですよね。「衛星軌道」とか「ラグランジュ点」とか、そういう言葉が好きな人なら、この感覚分かってくれるはず。今現実に存在する研究をもとにして世界観を構築するってやり方は、ともすればファンタジーになりかねないSFの世界観を、地に足の着いた、現実との地続き感を演出するのに有効な手段でしょう。
ですが、本編はそんな危機的状況をどうこうしようってなものではなく、あくまでもデブリを警戒しながらデータをサルベージするという話。地上のネットワークに存在するデータは、災害で失われた過去の技術(と言っても、古びた不必要なものというわけではない)となっているために、ダイバーが企業などからの依頼によってそれを回収しているのです。主人公のスズロもその一人。
なので、話の主軸に据えるべき技術として、ネットワークへのダイブ技術があるわけです。ダイバーたちは、この仮想空間の中で活動し、データを回収しています。
仮想空間の中には、暴走したセキュリティAIなどの危険もあるため、畢竟、スズロもネットワーク内での戦闘を余儀なくされます。ここらへんは、うまくバトル要素を絡めているなぁ、と感心します。
美少女+長刀という最近の
美少女バトルものの不文律もキチンと取り込んでいるあたり、芸が細かいというか。スズロの戦闘シーンは、往年の『ロックマンエグゼ』を彷彿とさせるものがあります。
それ以外でも宇宙空間における電子戦シーンがあり、むしろ
個人的にはこっちの方が熱い。デブリに衝突しないよう、細心の注意を払いながら、謎の(過去のデータから)復元された兵器と戦うシーンがありましてね、サルベージ船に備え付けのアレで、電磁波攻撃を仕掛ける場面なんか胸熱ってもんです。また、デブリを逆に敵を閉じ込める武器として用いることもあって、戦闘には作者が頭をひねった様子がうかがえて、かなりグッと来ます。最近の美少女バトルものに食傷気味の人には、かなりオススメできるシーンです。
本編では、宇宙に出た人々を治めている統合政府に反抗するテロ組織も登場してきて、いよいよきな臭くなってきました。その中でダイバーであるスズロは、ネットワーク世界で、現実世界で、どんな判断を下すのか。続きが楽しみな漫画が増えました。
FLIPFLOPs先生って、東方の同人で有名ですし、『猫神やおよろず』もいわゆるファンタジーなので、そっちの方向に特化した作家なのかと思っていましたが、引き出し多いんだなぁ。
テーマ:漫画の感想 - ジャンル:アニメ・コミック
- 2011/05/03(火) 14:44:56|
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